副腎疲労とうつ病の違い

腎臓の上にある「副腎」。
そこからは、副腎皮質ホルモンや副腎髄質ホルモンなどの「ホルモン」が分泌されます。
副腎とは、左右の腎臓の上に存在する1つ3~5g程度のとても小さく、生命維持のために不可欠であるホルモンを製造・分泌する内分泌器の一つ。
その他にも、血糖のコントロールや免疫機能、炎症反応など、生命活動において大切ないくつもの機能が備わっているのです。
その副腎が疲労すると…
そもそも疲労とは何なのか?
疲労とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えられた時に、一時的な身体的および精神的な機能が低下する現象のこと、と定義されており、肉体疲労と精神疲労があります。
とはいえ、私たちが感じる疲労には、肉体と精神の両方が関係していることが多いです。
その疲労を回復させるためには、たとえば、肉体疲労の場合は休息や睡眠。
精神疲労の場合には、気分転換やリラクゼーションが効果的だとされています。
疲労とは体を休息させるためのサインなのです。
しかし、このような休息をとっても回復しない疲労があります。
それは、病気による疲労です。
がんや、それに伴う精神障害、肝炎、結核、AIDS、脳血管障害、膠原病、うつ病など、数多くの病気が影響しています。
このような疲労は、原因となっている病気が治癒しない限り、いくら休息や気分転換をしても疲労が回復することは難しいのです。
様々な病気の原因となるストレスの仕組み
また、それらの根本的な原因となっているのが「ストレス」です。
私たちの体はストレスを受けると反応を示します。
毎日の生活の中で、一人ひとり、そのようなストレスを知らずしらずのうちに溜め込んでいるのです。
彼が説いた「ストレス学説」によると、体はストレスを受けると3つの段階を経て、病気を発症します。
「警告反応期」「抵抗期」「疲労期」の3段階※1です。
第1段階:警告反応期
この段階はストレスを最初に感じた時期。ストレスが軽く、ストレスを受けているということをあまり自覚していない状態。
第2段階:抵抗期
ストレスから体を守るために抵抗力が高まる時期。ストレスに対してバランスを保っている状態で、心身の活動が活発化する。
第3段階:疲労期
疲れがピークに達し、ストレス関連の症状が現れる時期。
抵抗のためにエネルギーが消費され続けて枯渇し、病気もしくは死に至る。
このような段階を経て、私たちの体は反応し病気を発症するのですが、最悪の場合には、命に関わることもあるため、日頃から自分自身のストレスと向き合うことが大切なのです。
ストレスを受けると「副腎」は疲労する
「副腎疲労」とは、上記のような様々なストレスを日々感じることで、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌が続き、副腎に疲労が蓄積してしまうことです。
副腎皮質から分泌されるホルモンの一種であるコルチゾールは、ストレスを受けると分泌量が増えます。
たとえば、低血糖の時にコルチゾールが分泌されると、脂肪をエネルギーに変換してくれます。
主なコルチゾールの働きは、糖の新生やたんぱく質の代謝、脂肪分解などの代謝の促進、抗炎症作用、免疫抑制作用など様々。
コルチゾールが必要な時に十分な量を分泌できなくなると、ホルモンバランスが崩れ、副腎機能が低下してしまうのです。
その影響による症状としては、ストレスや感染への抵抗力の低下やアレルギーの発症、低血糖、免疫力の低下など。
これらの様々な症状が現れていることを「副腎疲労症候群」といいます。
また、副腎疲労によって現れる代表的な症状が、慢性的な疲労です。
疲労というのは検査を受けてもその原因がわからないことが多く、目に見える症状ではないため、うつ病だと思い込んでいる方は少なくありません。
その結果、副腎疲労症候群にも関わらず、うつ病と診断されてしまうのです。
誰もがなってしまう可能性のある「うつ病」
うつ病とは、気分の落ち込みや、食欲、睡眠欲、性欲などの意欲低下する症状が長い間続き、毎日の生活には影響を及ぼす状態のこと。
また、疲労感や不眠、頭痛などの身体症状も現れます。
これらの症状は、時間が経っても改善されることはないのです。
2014年には111.4万人にのぼります※2。
そのため、発症する可能性が高まっているといえるのです。
うつ病になりやすい人の特徴
- 責任感が強い
- 生真面目
- 律儀である
- 几帳面
- 仕事に熱心
- 完璧主義者
- 自己完結型
- 一つの物事に執着
- 他人の評価がとても気にする
- 自己否定的な考え方
- 悲観的な性格
- 柔軟性に乏しい
うつ病の原因には、個人一人ひとりの様々なストレスが関係していますが、その発症メカニズムについては、まだはっきりとはわかっていません。
とはいえ、これまでの研究によって、脳中の感情をコントロールする神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミン。
そのバランスが崩れてしまうことが原因の一つだと考えられています。
「うつ病」と「うつ状態」は違う症状である
ここで、「うつ病」と「うつ状態」の違いを整理します。
強い「うつ状態」が長く続き、毎日の生活に支障をきたす「うつ病」。
当然、嫌なことや不安になること、元気が出ないことなど、気持ちがマイナスに働いてしまうことを経験しますが、そのような気持ちの変化はうつ病ではなく、うつ状態だといえます。
うつ病というのは、気分の落ち込みや、食欲、睡眠欲、性欲などの意欲が低下する症状が、毎日、そして数週間以上続く状態のこと。
また、身体的な症状も伴うため、生活に大きな支障をきたし、混乱や悲しみなどに生活を支配され、自分自身をコントロールすることができなくなります。
さらに、何をするにもやる気が起きず、自分に価値を感じなくなり、自殺を考えてしまうことも多いのです。
たしかに、副腎疲労の方でも、うつ状態や疲労感、意欲の低下、身体的な機能低下などの症状を感じます。
けれども、強いうつ状態が何日にもわたって継続的に続く、うつ病レベルの症状ではないといえます。
副腎疲労の症状に抗うつ薬の効果なし
一般的な治療法とされているのが抗うつ薬です。
抗うつ薬には、神経伝達物質の量を増やして脳を活発にする働きがあり、症状を改善することができるのです。
しかし、副腎疲労の人が抗うつ薬を服用しても効果はない。
その理由は、副腎疲労による「うつ状態」は脳の症状ではなく、あくまで副腎機能の低下が原因だからです。
そのため、副腎疲労によって神経伝達物質の量が減少している場合、抗うつ薬では直接効果を期待できません。
なぜなら、副腎が疲労している限り、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどを増やしても、根本的な改善にはつながらない。
ましてや、抗うつ薬による副作用だってあるのです。
ノルアドレナリンやドーパミンは、興奮を引き起こす神経伝達物質。これらが過剰に分泌されると、興奮や不安などの状態が続いてしまいます。
これを抑制して気分や意欲を安定化するのが、セロトニンです。
先ほども述べましたが、うつ病はこれらの神経伝達物質が極端に少なくなって発症します。
副腎疲労なのか?うつ病なのか?
副腎疲労によるうつ状態とうつ病には違いがあるのでしょうか。
一般的に、「疲れが溜まる」「朝起きられない」「常に寝不足」「集中力が続かない」「全然やる気が出ない」「気分が落ち込みやすい」「風邪がなかなか治らない」など、それぞれに共通している症状は多いです。
けれど、症状の原因になっている場所や症状に関係するホルモンは違います。
もちろん、脳内の神経伝達物質は、副腎から分泌されるのですが、副腎から送られるホルモンは、副腎の場合はコルチゾールなどであり、脳はセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなど異なります。
また、副腎疲労とうつ病を見分けるための反応があります。
一つは、抗うつ薬が効かないということ。もう一つが、「夕方以降に元気になる」ということです。
なぜ夕方以降に元気になるかというと、コルチゾールは1日を通して均一に分泌されるのではありません。
朝8時に最も多く分泌され、夕方以降に減少し、真夜中から朝方にかけて最も少なくなります。
朝の目覚めるのはコルチゾールの濃度が上昇するからです。
副腎疲労の方は、このサイクルが不規則。
そのため、時間によってコルチゾールの分泌量が急激に上がったり、下がったり。
正常値より全体的に少なくなる人もいます。
コルチゾールが少なからず分泌されている間は、ストレスに対応するエネルギーを確保できますが、副腎が疲労していると、コルチゾールの分泌が不規則なため、特に夕方以降に分泌量が増えて元気になる傾向にあります。
一方、うつ病では一日を通して元気がない状態が続くというのが特徴です。
上記で提示した反応は、あくまで傾向から考えられることであるため、すべてに当てはまるわけではありません。
しかし、現状では副腎疲労の知名度が高くないということもあり、精神科や心療内科などでうつ病と診断され、治療を続けても一向に良くならないということが多いのです。
副腎疲労が症状の原因なのかもしれない
現在、溜まっていく疲労や原因不明の病気、憂うつな気持ちなど、精神的にも肉体的にも様々な悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決するためには、その原因を知る必要があるのです。
そのために有効な検査があります。副腎の疲労度をチェックする「副腎疲労検査」です。
この検査では、起床後から就寝前まで1日4回唾液を採取し、副腎から分泌されるコルチゾールなどを測定。
現在の副腎疲労度を調べることができます。
うつ病の場合には、もちろん正確な診断が必要です。
医師による問診で患者が感じていることが、うつ病によるものなのかを判断するため、最近の日常生活の様子やその時の気持ちを伺い、その変化を比較。
それによって病状を見極めていかなければなりません。
しかし、問診による診断ではどうしても限界がある。
繰り返しになりますが、副腎疲労とうつ病では症状が似ており、そのため、正確な判断は難しく、副腎疲労なのにうつ病の治療を受けていることも少なくありません。
アメリカの場合、うつ病をはじめ、感染症、糖尿病、高血圧などの様々な病気を治療する際には、まず副腎疲労の治療を優先するように指導されているようです。
不調の原因がわかれば、最適な治療法が見つかりますから。
うつ病だとしても、あるいは副腎疲労による症状だとしても、副腎の疲労を取り除くことは、いま抱えている症状を改善するための、第一歩となってくれるでしょう。
ブログ記述者

ブログ記述者
理事長 松山 淳
杏林大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学医学部助手・医学部附属厚生女子学院(現:慶應義塾大学看護医療学部)講師、国立病院臨床研究部病理室長などを経て、米国抗老化医学研究所・クリニックにて研修。現在、日本人初の抗加齢スペシャリストとして、米国アテナクリニックインターナショナル抗老化部門部長、及び日本の複数の抗老化医療研究所、クリニックの顧問医を務める。
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