サイトカイン療法サイトカイン療法
     

幹細胞によるサイトカインと「再生医療」~臍帯幹細胞培養上清液

再生医療とは

iPS細胞をきっかけに注目を浴びることになった「再生医療」。
従来の医療とはまったく違ったアプローチによる療法で、これまでの概念を大きく変えたのです。

再生医療とは、皮膚や血管などの組織や、心臓や腎臓などの臓器に特定の細胞を補充することにより、病気や怪我などで失った組織や臓器を細胞レベルで再生すること。
それぞれの組織や臓器などを元の状態に修復することができるとされています。

細胞

細胞一つひとつには寿命があり、長いものや短いものと様々です。
その中で失われた細胞自体を再生させる能力をもった細胞が存在します。
その特別な能力を備えた細胞が「幹細胞」です。

現在、再生医療として活用されるその幹細胞には、私たちの体内に存在し、いくつかの異なった組織や臓器になる能力をもつ「体性幹細胞」、受精卵から培養してつくられる「ES細胞」、そして、細胞に特定の遺伝子を人工的に加えて生み出される「iPS細胞」があります。

iPS細胞
これらの幹細胞において、医療への応用が最も進んでいるのが「体性幹細胞」。
人間の体内に存在する細胞を活用するため、iPS細胞と比較しても、安全性は高い。
また、iPS細胞は細胞に遺伝子を加えて人工的につくられる多能性の幹細胞であるため、ガン化などのリスクも懸念されています。

iPS細胞・ES細胞と体性幹細胞の違い

iPS細胞とES細胞、体性幹細胞の違いとして、iPS細胞とES細胞は、様々な組織や臓器に分化する能力をもつ万能細胞であるといえます。

ES細胞(Embryonic Stem Cell:胚性幹細胞)とは、受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を採取・培養してつくられる幹細胞です。

Embryonic-Stem-Cell

神経細胞や皮膚細胞など様々な種類に分化し、ほぼ無限に増殖する高い増殖能力をもっています。
しかし、生命の萌芽といわれる受精卵からつくるため、「将来一つの命となる受精卵を犠牲にすることはどうなのか?」という倫理的な問題があります。

また、iPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)は、皮膚や血液などから採取した体細胞によってつくることができます。
いくつかの遺伝子をその細胞に入れ、人工的に未分化状態に戻した幹細胞です。

2012年に、iPS細胞を発明した京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
iPS細胞の名付け親は、世界で初めてiPS細胞の開発に成功した山中伸弥教授です。

そもそも、iPS細胞が誕生したのは2006年。
新しい多能性幹細胞として、再生医療を実現するために重要であると期待され、他にも、病気の原因解明や新薬の開発にも役立てることもできるため、現在も研究が進められています。

ES細胞と同様、培養によってほぼ無限に増やすことが可能で、筋肉や心筋、神経、肝臓、骨など、様々な細胞に分化する能力をもつiPS細胞には、将来的に臓器自体をつくることが可能になるという大きな期待が寄せられています。

とはいえ、万能細胞ということもあり、意図しない細胞への分化や、発がんリスクなども高いとされていることも事実です。

体性幹細胞による再生医療の可能性

体性幹細胞にはいくつか種類があり、血液をつくる「造血幹細胞」や、骨や筋肉、脂肪などを様々な組織や臓器をつくる細胞へ分化する能力をもつ「間葉系幹細胞」などがあります。

体性幹細胞は、特定の細胞にのみ分化する細胞のため、iPS細胞やES細胞のようにほぼすべての細胞に分化できる「多能性幹細胞」とは異なります。

ちなみに、他にも「全能性幹細胞」というすべての細胞に分化が可能な細胞もあります。
それが受精卵なのです。

骨髄

間葉系幹細胞は、1970年代には骨髄の中にあることが発見されました。
治療が困難な脊椎損傷や肝機能障害などの治療への活用が期待され、骨髄由来の「間葉系幹細胞」の治療への実用化に向け、数多くの臨床研究が進められてきたのです。

しかし、骨髄由来の間葉系幹細胞には一つの問題が。
それは、採取できる量が限られているということです。

そのため、移植に必要な量を確保するために体外で培養・増殖する仕組みや、感染や異物の混入などを防ぐために幹細胞を培養する施設も課題でした。

そこで、注目され始めているのが脂肪由来の間葉系幹細胞です。
2001年、骨髄由来と同等の能力をもち、より多くの幹細胞を確保できる脂肪由来の間葉系幹細胞が発見されました。

これを機に、近年では、神経細胞や肝臓に分化することも判明し、神経や心筋、骨を再構築する再生医療に応用するための研究が重ねられてきました。

さらに、免疫抑制作用や腫瘍に蓄積する性質も発見され、体性幹細胞を移植後の拒絶反応を防止するための研究や、がん遺伝子治療薬を患部に届ける役割を活用する研究なども進められています。

幼児

間葉系幹細胞は、幼児期にたくさん存在しますが、年齢を重ねるにつれてその数は減少。
新生児がもつ間葉系幹細胞は骨髄にある細胞数の1万分の1、10代では10万分の1、30代では40万分の1、さらに、80代では200万分の1にまで減少するといわれています。※1

年齢によって数に違いはありますが、幹細胞は誰もがもっているため、たとえば骨髄や脂肪から間葉系幹細胞を採取して培養し、それを目的の細胞に分化させれば、再生医療の新材料として活用することができます。

つまり、間葉系幹細胞は大きな可能性を持った細胞なのです。

幹細胞を培養することで分泌される「培養上清」

そんな幹細胞を用いた再生医療における新たな手法が存在します。
それは「培養上清」です。

「培養上清」とは、人間の体内に存在する幹細胞を培養液によって培養することで、幹細胞から分泌されるペプチド成分です。

幹細胞培養上清液には、幹細胞から分泌された情報伝達物質である約800種類以上のたんぱく質「サイトカイン(成長因子)」が存在します。
そのサイトカインを豊富に含む培養上清は、老化などが原因で衰えた細胞を回復させるためにサポート役として、健康と美容に対して様々な効果をもたらしてくれるのです。

抗加齢
サイトカインはダメージを受けた体内の組織や臓器に存在する細胞の機能回復を促し、細胞を活性化することができます。
たとえば、炎症の回復、臓器や血管の再生、美容の改善、抗加齢、毛髪再生などの効果です。

主なサイトカイン

  • EGF:上皮細胞成長因子
    肌の上皮(皮膚・粘膜など)の成長・再生・修復を行い、新しい細胞の生産を促進する。ターンオーバーを促し、色素沈着やくすみを予防。
  • IGF:インスリン様成長因子
    細胞DNA合成を調整。壊れた細胞の再生を助ける作用により、新しい皮膚の細胞を生み出してコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を増やし、ハリを回復。
  • VEGF:血管内皮細胞成長因子
    血管新生(既存の血管から分枝伸長して血管を形成すること)に重要な役割を果たす。
  • TIMP:MMP阻害因子
    MMP※1による組織コラーゲンやエラスチンの分解を抑制し、組織化が生じることを防ぐ。
  • KGF:角化細胞成長因子
    表皮の約80%を占め、表皮の角化を司る角化細胞(ケラチノサイト)を生成・分裂・増殖を促進。ターンオーバーを整え、皮膚の水分保持やバリア機能を維持するための重要な役割を担う。また、毛母細胞の活性化にも働きかける。
  • TGF-β1・β3:トランスフォーミング増殖因子
    コラーゲンのような結合組織の合成・増殖を促進。細胞組織の再構築、創傷治癒、炎症、免疫などにも重要な役割を果たす。
  • FGF:線維芽細胞成長因子
    真皮の線維芽細胞の細胞分裂を活発にして、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を増やす。しわ改善や美白、創傷治癒に効果を発揮する。

 

体内の細胞を再生する機能をもつ幹細胞

ここでもう一度、幹細胞について考えてみます。

私たちの体は約37兆個の細胞によって構成され、その中でも特に、皮膚や血液の細胞は寿命が短く、絶えず新しい細胞に入れ替わる必要があります。
その失われた細胞を再び生み出して補充し、体内の組織を維持するという能力をもつ細胞、それが幹細胞です。

幹細胞

幹細胞がもつ能力

自己複製能:
幹細胞が分裂をくり返すことにより、自分と同じ形や能力をもった細胞をつくることができる能力
多分化能:
必要に応じて体の様々な組織細胞に変化することが可能な能力

幹細胞には、失われた細胞を新しく生み出し補うという役割があります。

そのため、全身に存在する幹細胞は血管やリンパ管の中を移動。
ダメージを受けた部位の細胞からのSOSに反応し、その場所に向かいます。それを「ホーミング効果」と呼び、幹細胞がもつ一つの性質です。

目的の場所に集合した幹細胞は分裂して新しい組織や血管など、目的に応じた細胞に変身。
骨や脂肪、神経などに変化して特定の部位を修復・再生するのです。

先ほど紹介した幹細胞の培養上清。
そこで重要な役割を果たすのが、サイトカインです。

サイトカインは、幹細胞から分泌されて細胞同士の情報伝達を担い、細胞の増殖・分化・修復機能の発現、免疫の調節、炎症反応の抑制など、様々な役割をまっとうします。

再生医療で用いられるサイトカインは、老化や外的損傷を受けた細胞の機能回復のために使用されるのです。

幹細胞由来の培養上清液※

  • 乳歯髄幹細胞由来
  • 骨髄幹細胞由来
  • 脂肪幹細胞由来
  • 臍帯幹細胞由来

 

「“臍帯”幹細胞の培養上清」による治療

ここでは、幹細胞由来の培養上清液の一つであり、最近注目されている「臍帯幹細胞由来」をご紹介します。

臍帯とは、へその緒のこと。
赤ちゃんの成長に必要な血液がつくられる場所です。
その臍帯内に含まれる幹細胞は、増殖や分化などを繰り返すことで生体組織や血液などを生成。

新生児

つまり、臍帯に存在する幹細胞にはとても高い再生能力があるといえるのです。

臍帯幹細胞培養上清液療法では、赤ちゃんの臍帯から採取した臍帯幹細胞を培養し、そこから分泌されたサイトカインなどを使用します。
サイトカインには体の各組織などを形成する数多くの働きがあり、様々な効果を得ることが可能なのです。

特に、美容や抗加齢の分野で活用されています。

幹細胞培養上清液療法によって改善される症状

  • 肌のくすみ
  • しみ、そばかす
  • 乾燥肌
  • 赤ら顔
  • 眼の下のクマ
  • 小じわ
  • 毛穴の黒ずみ
  • フェイスラインなどのたるみ
  • ニキビ
  • ニキビ跡などの色素沈着
  • アトピー性皮膚炎
  • 薄毛
  • ED など

 

美容や抗加齢で効果があるとされている成分には、コラーゲンやヒアルロン酸、プラセンタなどがあります。
それらを使用した代表的な治療が、サプリメントや点滴、注射などです。

最近では、それら以上の効果を得られると考えられている新たな治療が登場しました。それが「臍帯幹細胞培養上清液療法」です。

プラセンタと比較すると、プラセンタはいわば母親の血液。
赤ちゃんの血液をつくる臍帯の方が、より再生能力が高いとされています。

自分の中の力を引き出す「再生医療」

幹細胞培養上清液療法は、再生機能をもつ幹細胞を培養して利用する“再生医療”です。

それぞれの幹細胞特有の能力を活用し、組織や臓器に存在する細胞を再生する。
そんな新しい治療法であるこの再生医療は、体内の細胞の状態を再現することを可能にしたといえます。

加齢

誰もが避けることのできない老化現象。
たとえば、感覚や神経、骨などの衰え、免疫力の低下、また、皮膚や肌の質も落ちてしまいます。
このような変化の原因は、細胞の機能が老化すること。というのも、年齢を重ねることによって細胞の数は減少してしまうからです。

幹細胞による治療は、その老化を巻き戻すことができ、若々しい体への再生につなげることを可能にします。

まさに再生医療とは、「自分の中で失った力を再び引き出す医療」なのです。

※1)「間葉系幹細胞による臓器再生」

※2)MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ):
コラーゲンやプロテオグリカン、エラスチンなどの細胞間にあるたんぱく質を分解する酵素の一種。MMPの異常発現ががんや炎症、多発性硬化症や歯周病など様々な疾患の発生に関与していることが明らかになっている。

※3)
培養上清液:
サイトカイン以外に成長因子などの有効成分を含んだ、細胞再生活性物質である。

ブログ記述者

ブログ記述者

理事長 松山 淳

杏林大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学医学部助手・医学部附属厚生女子学院(現:慶應義塾大学看護医療学部)講師、国立病院臨床研究部病理室長などを経て、米国抗老化医学研究所・クリニックにて研修。現在、日本人初の抗加齢スペシャリストとして、米国アテナクリニックインターナショナル抗老化部門部長、及び日本の複数の抗老化医療研究所、クリニックの顧問医を務める。