幹細胞を用いた再生医療とは

近年、幹細胞を使用した再生医療が大きな注目を集めています。
再生医療の中でも幹細胞を用いた幹細胞治療というものは、先進的で高度な医療として知られています。
そのため、厚生労働省に認定された特定認定再生医療等委員会の審査に通った医療機関のみが治療を行えるのです。
今回は、そんな幹細胞治療について詳しくご紹介しましょう。
幹細胞とは一体何なのか
幹細胞治療を用いた再生医療の説明をする前に、幹細胞とは一体どのような細胞なのかを説明していきましょう。
私たち人間の体は、およそ37兆個もの細胞でできています。
細胞にはそれぞれ異なる働きがあり、生きていくために必要なサポートをしてくれています。
例えば、血液の中にある赤血球の役割は酸素などを私たちの体全体に運んでいくというもの。
神経組織を作るために必要な働きをする神経細胞というものもあります。
このように様々な働きを持つ細胞によって、私たちの体は形成されているのです。
様々な働きを行い体の機能を保っている細胞の中でも、特殊な働きを持っている細胞があります。
それが、幹細胞です。
幹細胞は、細胞を新たに生み出すという働きを持っています。
転んで擦りむいてしまった時に、皮膚組織が傷付いてしまい、血が出てくるでしょう。
ケガをして出血した場合には、消毒をしたり絆創膏などを貼ったりしてかさぶたができるのを待ちます。
かさぶたが自然に剥がれてくる頃には、傷口が治り、元通りに。
血液に含まれている血小板がかさぶたを作り、幹細胞がそのかさぶたの中で新しい皮膚細胞を生み出すという作業が行われているため、最終的には傷が元通りに治るのです。
つまり、幹細胞が皮膚細胞に変化し、増殖していくことによって、新しい皮膚組織ができたということ。
幹細胞という細胞は自然治癒力と大きな関わりを持っているため、私たちの体にとってなくてはならないものだと言えるでしょう。
このような素晴らしい働きを持っている幹細胞が日本国内で注目されるようになったのは、2006年に山中伸弥教授らがiPS細胞を生み出すことに成功した時。
iPS細胞は、幹細胞を人工的に誘導することで作った多能性幹細胞です。
これまで見つかっていた幹細胞は、それぞれの役割に合った細胞にだけ変化することができました。
血液幹細胞であれば血液に関する細胞を作り、皮膚幹細胞は皮膚に関する細胞を作るということになります。
しかし、多能性幹細胞の場合は、様々な細胞に変化することが可能です。
多能性幹細胞自体は、元々私たちの体の中にも存在していて、「胚性幹細胞(ES細胞)」と呼ばれています。
しかしながら胚性幹細胞は受精後に人の体が作られる初期の段階だけ活動している細胞のため、再生医療などの現場で役立てることはとても難しく、倫理的にも問題があると言われていました。
そのため、胚性幹細胞を活用した再生医療というものが実現することはないと考えられていたのです。
それに対してiPS細胞の場合は、胚子を使っていないため倫理的な問題が発生することはありません。
また、iPS細胞自体が自分自身の体から採取した幹細胞を使用しているため、拒絶反応などの副作用が起こる可能性も非常に低くなっています。
このようなメリットから、安全に幹細胞を移植することができるiPS細胞を使用することによって、様々な疾患に対する治療の幅が広がると考えられるようになってきました。
再生医療に用いられる幹細胞は決まっている?
再生医療に用いられる幹細胞は、脂肪由来の幹細胞と臍帯由来の幹細胞が多くなっています。
続いては、この2つの幹細胞の特徴について説明していきます。
脂肪由来の幹細胞とは?
脂肪由来の幹細胞は、脂肪組織や軟骨、心筋細胞、骨などの細胞に変化する幹細胞となっています。
様々な細胞に変化できるという特徴があるため、再生医療の現場において応用しやすいと考えられている幹細胞です。
脂肪由来の幹細胞は体性幹細胞に分類されており、常に私たち人間の体の中で活動をしています。
そのデメリットを感じずに抽出できるという点も、脂肪由来の幹細胞が注目される要因の1つになっています。
臍帯由来の幹細胞とは?
臍帯由来の幹細胞は、へその緒にある組織に含まれている幹細胞です。
造血幹細胞と呼ばれていて、赤血球や白血球といった細胞に変化する働きを持ちます。
臍帯由来の幹細胞を再生医療で使用することで、血液の病気を治療する際に役立ちます。
また、シミやシワを改善するという働きもあることから、美容分野でも注目が高まっています。
この2つの幹細胞は、どちらも再生医療の分野で大きな注目を集めています。
臍帯由来の幹細胞に関しては、状況によって受けられないという可能性もゼロではありません。
幹細胞治療では幹細胞培養上清液を用いる
幹細胞培養上清液は、幹細胞治療で用いられるもので幹細胞を抽出し、培養した時に使用される溶液のことです。
幹細胞培養上清液の中には、培養するときに幹細胞から分泌されたサイトカインが豊富に含まれています。
また、サイトカイン以外にもコラーゲンやヒアルロン酸、抗酸化酵素などの酵素、ビタミンなどが含まれているため、美容面においても非常に魅力的なものだと言えるでしょう。
そのため、美容クリニックなどでも幹細胞治療を取り入れているケースが増えています。
さらに幹細胞培養上清液を使用した幹細胞治療を行う場合、幹細胞を抽出するドナーのスクリーニングをしっかりと行い、人間の細胞から抽出された幹細胞のみを使用するなど安全面においてかなり配慮をしています。
これだけしっかりとした手順を踏んでいるため、幹細胞培養上清液を使用した幹細胞治療の安全性は高いと言えるでしょう。
幹細胞培養上清液に含まれているサイトカインとは
幹細胞培養上清液にはサイトカインがどのようなものか知らないという人も少なくはないでしょう。
そこで続いては、サイトカインの種類について説明をしていきます。
EGF
EGFは、皮膚の細胞によって作り出される表皮細胞を増やすように指示するものです。
表皮細胞が増殖すると、肌のターンオーバーが正常になります。
そのため、EGFの働きによって肌トラブルの改善や若返り効果が期待できるのです。
FGF
FGFは、線維芽細胞増殖因子と呼ばれているサイトカインです。
その名前にあるように、線維芽細胞を増殖させるという働きを持っています。
線維芽細胞は、肌の土台になる細胞のことで、肌にとって必要なコラーゲンやエラスチンといった成分の分泌をしています。
それだけではなく、血管を生み出す働きも持っています。
その働きによって、酸素や栄養素が行き届きにくかった場所に血管を作り、肌質を改善させてくれるのです。
IGF-1
IGF-1は、インスリン様成長因子と呼ばれているサイトカインです。
このサイトカインは、細胞のDNA合成を調整するという役割を持っています。
何らかの原因で壊れてしまった細胞に対してIGF-1がアプローチをすることによって、再生するためのサポートをしてくれます。
そのため、新しい皮膚細胞を生み出す時などに役立ちます。
さらに、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった成分を分泌を促す働きもあるので、美肌を手に入れるためにも必要なサイトカインだと言えるでしょう。
VEGF
VEGFは、血管内皮細胞増殖因子と呼ばれているサイトカインです。
血管内皮細胞の増殖させるという働きを持っています。
この働きによって、新しい血管を生み出すことができます。
また、血管の健康を守るためにも重要な役割を果たすサイトカインです。
血管の健康状態が悪くなってしまうと美容にも悪影響を及ぼしますが、健康にも良くない影響を及ぼすことになってしまいます。
そのため、VEGFは私たちにとってとても重要なサイトカインだということになるのです。
サイトカインには、この他にも様々な種類があります。
それぞれのサイトカインが私たちの体の中で働いてくれることで、健康を維持できていると言っても過言ではないでしょう。
幹細胞治療によって得られる効果について
幹細胞を活用した再生医療では、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか?
続いては、その効果について解説していきましょう。
エイジングケア効果
幹細胞を活用した再生医療の効果の中で最も期待されているのは、エイジングケア効果です。
歳を重ねるごとに、肌の土台になるコラーゲンやエラスチンといった成分の分泌は低下していきます。
その結果、シワやたるみなどを生み出してしまうのです。
ヒアルロン酸が減少すると、肌の潤いを保つ働きも弱まってしまい、乾燥肌になってしまいます。
乾燥肌は、様々な肌トラブルの原因になってしまうため、しっかりと対策をしなければいけません。
そのような状況を乗り越えるためのサポートをしてくれるのが、幹細胞治療なのです。
幹細胞培養上清液に含まれているサイトカインの働きによって、肌のターンオーバーが正常になるよう促し、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった成分の分泌を正常にしてくれます。
つまり、幹細胞を活用した再生医療にはエイジングケア効果が期待でき、このような働きを持っていることで、スキンケアメーカーも幹細胞に注目し始めているのです。
神経細胞を修復する効果
サイトカインには、神経細胞の修復をしてくれる効果も期待できます。
神経細胞は、感覚を脳に伝えたり、脳から指令を出したりするという重要な役割を担っています。
神経細胞に傷が付いてしまうと、ある場所だけ機能を失ってしまうといった後遺症が表れる可能性もあります。
幹細胞培養上清液に含まれているサイトカインには、神経細胞の修復や再生をする働きもあるため、後遺症の緩和にも役立つと考えられているのです。
血管を再生する効果
血管は、歳を重ねるごとに弾力性がなくなっていき、高血圧や動脈硬化などが原因の血管に関する病気を発症する確率が高くなっていきます。
幹細胞培養上清液に含まれている幹細胞は、血管内皮細胞に生まれ変わることができます。
そのため、血管年齢が衰えてしまうことを防ぐという効果も期待されています。
血管が健康な状態になっていれば、血管年齢が若返るだけではなく、血管系の病気リスクを軽減させられるでしょう。
発毛を促進する効果
薄毛や抜け毛の原因は、発毛に関する細胞が正常に働いていないことが原因の1つになっています。
そのような状態では、発毛を促進させようとしても難しいでしょう。
幹細胞培養上清液を使用した幹細胞治療は発毛を促進させる効果も期待できます。
幹細胞治療を行うことによって、発毛に関する細胞の働きが活性化し、正常な働きを取り戻せます。
再生医療を活用した薄毛治療を行っているクリニックの中でも、幹細胞培養上清液を使用しているケースが増えているのは、それだけ魅力があるからです。
幹細胞培養上清液を用いた幹細胞治療は、老眼や歯の治療、癌細胞増殖抑制、ED、生活習慣病などに対する効果が期待できることから、さらに多くの場面で活用されることが期待されています。
さらに研究が進んでいけば、今以上に大きな効果を発揮してくれる可能性もあるでしょう。
幹細胞を用いた再生医療は、近年目覚ましい発展を遂げています。
その結果、医療分野はもちろんですが、美容分野でも活用されることが増えていきました。
病気で悩んでいるという人はもちろんですが、美容で悩んでいるという人もぜひ再生医療を検討してみると良いでしょう。
私たちの生活をより豊かにしてくれる再生医療は、これからさらなる発展を遂げることも期待できます。
今後の幹細胞治療、再生医療の進化にもぜひ注目してみてはいかがでしょうか?
ブログ記述者

ブログ記述者
グランプロクリニック銀座理事長 松山 淳
杏林大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学医学部助手・医学部附属厚生女子学院(現:慶應義塾大学看護医療学部)講師、国立病院臨床研究部病理室長などを経て、米国抗老化医学研究所・クリニックにて研修。現在、日本人初の抗加齢スペシャリストとして、米国アテナクリニックインターナショナル抗老化部門部長、及び日本の複数の抗老化医療研究所、クリニックの顧問医を務める。
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