岩本麻奈(Iwamoto Mana )グランプロクリニック銀座 理事長・医師
PROFILE
現在、パリを中心に居を構え、欧州大手製薬会社やコスメメーカーなどのコンサルタントを務める傍ら、様々なメディアを通して美容情報を発信中。
著書は『女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識』『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』など多数。
専門分野
- 皮膚科一般
- 美容皮膚科
- エイジングケア
「オリジナルを追求することで自分らしい美が見えてくる。」
日本とフランスの価値観の違いが美に影響する
「美は、イメージを形にすることではなく、意志である」
外見を整えることやキレイに見せる表現方法を習得することではなく、「美しくありたい」という意志が大切である。
そのことをフランスでの生活で学んだ。
そう話す岩本麻奈理事長(以下、岩本理事長とする)は、皮膚科専門医だけでなく、美容ジャーナリストやコスメプロデューサー、作家として、様々な角度から美に関する幅広い情報を発信している。
1997年に南フランスへ渡った際にフランスの美容法に感銘を受け、美容をさらに追求。
世界中の人々を魅了する、美容分野の最前線であるパリで働き続けている。
そんな岩本理事長は、まず日本とフランスの美に対する考え方の違いについて、
たしかにフランスでも見た目についてはそうです。同じ年齢で比べた時、フランス人は日本人より一般的にシワが多く、肌のハリも劣るかもしれません。
ただ、精神面の若さを考えると、そうではないと考えています」。
フランスでは、歳を取ったからといって地味な服を選ぶことは少ない。
常に若い気持ちでいること、そもそも年齢を気にしないというのが多数派。
この違いはなぜ生まれるのか?
また、フランス人の若さの秘密について岩本理事長は、
たとえば夫婦であっても、相手に魅力を感じなくなったら、我慢して関係を続けるということはしません。
年齢を重ねても、日本人より男女関係を重視します。
相手から魅力的に感じてもらうため、常に自分を磨くというメンタリティが一般的。
それが自分の魅力を維持するという考え方に繋がっているのです。
自分を磨くことの一つは「美容」。
そのことに対する考え方も、日本とフランスには違いがあると言う。
様々な人種がいることもあり、比較するのは難しいですが、周囲と比べた自分をあまり気にしません。
『自分のため』という軸を持っているのがフランスです。
一方、周囲と比べた自分を気にする日本では、自分自身の美しさを追求するのではなく、世間で流行している美容に依存しやすい傾向があります。」
また、以前よりメディアで注目されている「美魔女」を例にすると、
というのも、その美しさは同性目線という枠に限定されるため、『キレイになったけど好きな人から相手にされない』『夫とはセックスレスのまま』という結果になりがちなのも事実です。」
それはつまり、『センシュアリティ(官能性や心地良さ)』が足りないのだ。
「男女関係や性は、種の保存に関わるため、『生きる』に繋がります。それが満たされることで、心の若さが保たれていくと考えています」。
さらに、男女の関係性は結婚や出産をきっかけに大きく変化する。
フランスでは家庭を持つこと、相手との関係を続けることがイコールではありません。
愛なくして男女関係はないのです。
また、フランスの女性の多くは生涯働くことを選択する傾向にあり、経済的に自立した女性が多い。
そのため、事実婚を含めた婚姻生活の継続には、出産後も『父親』や『母親』の立場と、『男』や『女』としても相手を魅了することが必要であるため、それが魅力や若さを保つことの理由になっているのです。」
恋愛観の違いも美容の考え方に影響している。
フランスでは日本のような「告白」がほとんどない。境界線は曖昧だが、お互いのことを知った上で男女関係に発展するのがフランスのスタイルだ。そのため、常に自分の外見だけでなく中身も磨く必要がある。
岩本理事長の著書『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』に、それが取り上げられている。
「フランス人のある人は『恋人選びはワインセラー。ビンテージをいろいろ飲んで、それが合わなかったら次に行けばいい』と果敢に語ってくれました。
ラベルで判断してとりあえず付き合うのではなく、気に入った中身が見つかるまで味見を続け、見つかった時にどっぷり浸かるのがフランス流です。
『合わなくとも隣にたくさん並んでいるでしょ』と(笑)」。
現在はパリに住み、フランスと日本を年に数回行き来しながら、欧州の大手製薬会社やコスメメーカーのアドバイザー、日本のクリニックのコンサルタントを務める岩本理事長。また、一般社団法人日本コスメティック協会名誉理事長や株式会社ドクターセレクト、株式会社セレクトビューティーの商品開発、銀座ツバキクリニック顧問医師などにも従事。さらに美容ジャーナリストとして、美容や健康、文化問題まで、幅広いテーマの情報発信や執筆活動に励んでいる。
岩本理事長の経歴
所属
- 一般社団法人 日本コスメティック協会 代表理事長
- ナチュラルハーモニークリニック表参道 顧問医師
- ODOST FRANCE 顧問医師
- 巡活マッサージ(R)テクニカルスーパーバイザー
- 中国コスメ「本素」商品開発アドバイザー
- 日本皮膚科学会
- 世界抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
監修・アドバイスした主な化粧品
- アベンヌ、アデルマ(ピエールファーブルジャポン)
- ハイドロキシダーゼ(オメガファーマ社)
- エクスボーテ(ジークス)
- デクレオール(資生堂プロフェッショナル)
- ドクター・ルノー(マンダム)
- トゥシェナ(ディノス)
- トリコプラチナム(セレクトビューティー)
- マジエージュ(MuMs)
美容分野への強い志で自分の道を切り拓いた
岩本理事長は、現在までを振り返る。
教育熱心だった母により、その当時のエリートコースである番町小学校から麹町中学校、その後は学校群制度になったため都立富士高校へ。
両親ともに医者だったため、医者になるべくして育てられました。
けれど次第に『どうして私の人生を、誰かに決められないといけないのか?』という気持ちが強くなり、絶対に医師にはなりたくないと思いましたね。」
その後、高校では理系を選択した。
医師を選択肢として考え出し、高校卒業後は医学部へ進学。
しかし、産婦人科を継ぐことはまったく考えなかった。
大学に進学する際にも、母親の教育は徹底していた。
浪人してでも国立大学に進学したかった岩本理事長に「女の子なんだから」と、母親の母校である東京女子医科大学(当時は東京女子医専)への推薦入学が決まってしまったのだ。
「とにかく自立したかったので、大学に入学してすぐに家を飛び出しました。生活費が足りない時は父にこっそりとお願いしていましたけど(笑)」。
同時に、東京女子医科大学に入ってすぐ、美容や抗老化の分野に進もうと決めた。
「わたしにはこれしかない!」という強い志ができ、皮膚科を専攻。
そんな岩本理事長が美容に興味を持ったのは中学生の終わり頃。
好きな人ができたことで、キレイになりたいと思ったのがきっかけだった。
さらに、高校では化粧やパーマなども自由な校風で、ますます美容への興味が強くなった。
「メイクでキレイに変わることが、とても楽しかった」と話す。
しかし大学に入学した当時は、まだまだ美容は邪道扱い。
「美容分野をやりたい」と言うと、白い目で見られることが多かった。
そこで岩本理事長は大きな決断をする。
「女子医大には私と合わない先生がおり、美容分野への道を認めてもらえないだろうと感じていました。」
卒業後は、新天地を求めて父親の母校でもある慶應義塾大学医学部へ移り、皮膚科教室での研修を開始した。
そこでも美容への蔑視は同様であったが、教授に「私は美容と抗老化の勉強がしたい」という強い想いを伝えたことで、当然批判を受けることがありつつも、その分野を目指していることが周囲に知れ渡ったのだ。
「一緒に皮膚科をやっていた同僚の先生や女子医大の同窓生たちが、私を好意的に受け止めてくれましたし、美容関係の案件を回してくれたりして、本当に感謝しています。」
研修を終えた後、岩本理事長は済生会中央病院で数年間勤務し、日野市立病院に移った。
ある時、病院側から「皮膚科の売上を伸ばしたい」という要望があり、初めて「売上」について考えることに。
提案したのは、脱毛とピアス穴あけを自費診療として導入すること。
市営の病院ということもあり、案の定、反発が起きたが、自らピアス穴をあけて化膿する症例が多いということや、売上が見込めるということを熱くプレゼンしたのである。
その結果、岩本理事長の予想通り患者の数はグンと増加したのだ。
食生活の重要性を実感したフランス生活
1997年、岩本理事長に新たな転機が訪れた。
元夫の転勤が決まり、赴任したのは南フランスのトゥールーズという街。
「そこで3年間暮らしました。元夫は1年ちょっとで日本に帰ったのですが、家庭の事情もあり、私は子どもと共に残ることにしたのです」。
岩本理事長はフランスの美容に触れる中で、美や健康について深く考えるようになり、医学留学としてフランスで美容を学ぶことを決めた。
「フランスでは美容の研究が日本より進んでいたので、大学でレーザーや光治療などの研究を学びながら、ピエールファーブル社(南仏の化粧品メーカー)のラボに通いました。
薬を使わず健康でキレイになれるハーブやメディカルアロマなどの民間療法を勉強。
それまでは体調を崩すとすぐに薬を服用していたのですが、自然療法を学んでからは簡単に薬に頼ることを止めました」。
「薬を飲むよりも、規則正しい食事を心掛ければ風邪はすぐに治るよ」という留学先でのアドバイス。
食生活を変えると身体の調子が驚くほど良く、自然の食べ物の効果を実感した。
また、美容は健康的な食生活があって初めて成り立つということに気づき、自然治癒力を高めることが根本的な解決に繋がると、考えるようになったのだ。
2000年、岩本理事長の姿はパリにあった。
「理由は職を探すため。
パリでは、コスメやサプリのアドバイザーとして働き始めました。
パリで見つけた良い化粧品を、日本の製薬会社や化粧品会社に紹介。
逆に日本の良い化粧品をパリに持ち込み、紹介する仕事です」。
フランスでは、日本の医師免許で処方箋を出したり実際に治療を施したりすることができない。できることは悩みや不安などの話を聞くことだけだった。
生活習慣についてしっかりと話を聞き、皮膚科医としての知識とフランスで学んだことを組み合わせてアドバイスする。
実際に悩みが解決した方や不調が改善したという方も大勢いた。
悩みの本質を知ることの大切さを実感した。
言葉は誰かの生活を変えることができる
岩本理事長が執筆活動をスタートしたのは2003年。
きっかけは、日本に住む皮膚科医から「最近、◯◯という美容法を試しに病院へいらっしゃる患者さんが多いけど、実際に効果はありますか?」という相談を受けることが増えたのだ。
日本では毎日のように美容の都市伝説が生まれては消えている。
この現状に警鐘を鳴らすため、間違った美容法に関する本を書くことにした。
そこから、原稿執筆の依頼をいただくようになり、書く仕事が増えていったと言う。
『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』というタイトルで、シニア世代の女性を元気にしたいと思って書いた。
それからは皮膚科医としてだけでなく、女性を元気にするための仕事をするようになったのだ。
「フランスで駐在員の奥様たちを診ている時に実感した『言葉で人を救う』ことを、今度は文章によって実現したいと思ったのです。
また、治療が必要な患者さんには、民間療法から最先端医療まで幅広く、最適な方法を教えてあげたい。
そういうところに私としての役割があると考えました。誰かを救うための言葉を紡いでいきたいですね。」
岩本理事長は続けて、
自分が思ったことをすれば良いのだ。
「たとえば、自分が美しいと思うヘアスタイルがあれば、流行に流されずにやってみる。日本では周りと違うと、浮いてしまうこともあります。そのうえで、どれだけ個を大切にして生きていけるか。もっと自由にオリジナルを追求すればいいのです。」
岩本理事長は、日本人がもっと自分らしく、もっと元気に生きられるよう、私にできることを発信していきたいと、強く語った。
著書
書籍
◆「Dr.Manaのすっぴん肌力」講談社 2006年9月30日
◆「美の事典―パリ在住皮膚科専門医が教える、厳選の美知識」WAVE出版 2007年11月12日
◆「女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識」 Discover21 2010年8月11日
◆「日本女性のための本当のスキンケア」洋泉社 2013年2月14日
◆「パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ」Discover21 2015年1月29日
◆「生涯恋愛現役 女のセンシュアル・エイジング入門」Discover21 2016年4月14日
◆「生涯男性現役 男のセンシュアル・エイジング入門」Discover21 2016年4月14日
◆「結婚という呪いから逃げられる生き方―フランス女性に学ぶ」ワニブックス 2017年10月12日
出典
◆岩本麻奈 interview:自分だけの“美”をつくりあげること #1-3
◆美容ジプシーを救え! 美容大国・日本の偏りまくりの美容事情とは?
◆”老ける”理由は恋愛観にアリ? 美容ジャーナリスト・岩本さんに聞く
◆自費研 ドクターズ・ライフ vol.1-5
◆産経新聞 東京朝刊 美容アドバイザー 岩本麻奈さん
◆男性が「生涯現役」でいられる秘訣とは? 美容ジャーナリスト・岩本麻奈さんに聞く